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施設訪問記

北海道 慶和園を訪ねて

蝦夷富士を望む雄大な自然美

 札幌から車で南西へ約1時間30分。ジャガ芋中心の農村地京極町。眼前に蝦夷富士こと羊蹄山(標高1898メートル)の勇姿を望む自然美いっぱいの地に長さ約120メートル、外装が茶系にグレーの扇型をした鉄筋コンクリート二階建ての近代的な建物が車窓に飛び込んでくる。それが平成14年4月に全面改築を完了し、特別養護老人ホーム「ユニットケア慶和園」に併設された、定員20人の養護老人ホーム慶和園である。
 敷地面積約1万8555平方メートルで建築面積約2800平方メートルの施設周辺は、冬こそ豪雪地のため白一色だが、夏は花壇や緑地、畑地にグラウンド、ゲートボールとパークゴルフ場、それに全面舗装で来客や職員用を含め80台確保の駐車場が整備されている。花壇や畑地は利用者に自由開放。収穫物は施設の食膳を飾ることがしばしばである。利用者に農家出身者が多いため、農作業は利用者の生きがいになっている。もちろんゲートボールやパークゴルフ場は地域開放で、利用者と地域住民の交流にもプラスしている。
 融雪のためのロードヒーティング敷設で大型バスも通行可能な屋根つき車寄せを入ると正面玄関。冬場の防寒を考慮した三重の自動ドアと段差の無いバリアフリーで施設内と結ばれている。玄関脇に事務室、正面のデイルームや相談室などを含め扇の形状をした施設は、中央部の大ホールを境に、正面左の北側一階は管理部門、調理室、ボイラーや電気室などの機械室、温泉導入で男女別々の大浴場、会議室などがある。南側一階は、特養のエリアで定員20人。ショートステイ5室は全部屋個室で、応接室やキッチン、食堂などを兼ねるデイルーム周囲に10室ずつ配置され、二つのグループに分かれて生活できるよう文字通りユニットケアで設計されている。
 羊蹄山の眺望を生かそうと大ガラスの壁で吹き抜けになっている一階大ホールは、多目的交流広場を兼ねた地域交流スペースで、機能回復訓練室、電動で上下するステージなどがあり、地域ボランテイアの訪問や利用者と地域住民の交流、家族との団欒の場としても活用されている。

利用者の視点に立った設備の充実を図る

 2階すべてが定員70人の養護エリア。中央部の食堂前にあるオープンカウンターの介護ステーションからは、扇型の施設特徴を活かして、ナースコールとは別に廊下両側に並ぶ全部屋個室への出入りが見えるようになっている。また、部屋と部屋をドアで仕切った夫婦部屋が四室ある。21畳の和室をはじめ、二つの談話室、一階と同じ温泉導入で就寝前に開放している男女別々の浴場、入居お年寄り専用の洗濯室と乾燥室、デイルーム、それに全員分の冷蔵ロッカーも設置されている。
 トイレは、部屋と部屋の間に設けられ、一階の特養も同じ。このためトイレは、施設全体で53を数える。エレベーター完備のほか舗装された車イス専用道など施設の内外ともバリアフリーで、時代に即応した工夫が随所に見られる建物を誇っている。

平成12年10月に公営から法人運営に

 慶和園は、昭和46年3月、温泉完備の老人施設として地元京極町が定員50人で開設したが、2年後には定員100人へ拡大(昭和56年から現定員の70人)するなど、隣接町村を含めた地域老人福祉の中核的な役割を担ってきた。しかし、建物の老朽化とともに、時代の福祉ニーズに応えるには民間活力が不可欠と、平成12年10月に29年の町営施設の歴史にピリオドを打ち、社会福祉法人黒松内つくし園へ無償移譲となった。
 施設建設は、新しく「ユニットケア慶和園」をプラスした単年度事業で展開され、14年4月から文字通り新しい慶和園でのスタートになった。

地域とともに歩む施設を目指して

 慶和園は、社会福祉法人として45年の伝統を誇る黒松内つくし園のノウハウを生かした21世紀の施設づくりをめざしている。自己評価や福祉QCの展開、苦情解決など生きがいとケアを重点に老人福祉として取り組むべき諸活動、事業は職員の発想も大いにとり入れ意欲的に取り組んでいる。
 特徴ある施設の一つとして、地域住民との一体化も大きな柱にしている。地域内に児童数がわずか12人の小学校があり、この学校と運動会や学芸会はもとより、ひな祭りやクリスマス、ゲーム大会など各種行事、催しで交流を深めて、児童はもとより父母の会、そして地域部落会との交流など、その範囲は年々と広がっている。
 その充実の方策として、盆踊りや花火中心の慶和園祭りを、地域の俗名である南京を冠にした「南京ふれあい祭り」と改名し、慶和園の名を取ったことにより地域住民はじめ誰もが気軽に参加できる老人中心の催しとして、昨年は約300人もの人が参加する大盛況で、慶和園への理解を深めてもらった。
 慶和園は、法人の倫理綱領の、1.全ての人は自由であり、権利も平等である、2.生活の中心は利用者、3.利用者と職員は互いに敬い合う、を原点に、今日も老人の笑顔に包まれている。

(安田良一/老−25期)


山形県 ケアハウス鶴が丘を訪ねて

安心と利便性に富んだ住まい

 「おはようございまーす。変わりねがー」、「変わりねー。雪降って大変だったのー、ご苦労はん」朝食が終えた入居者と出勤した職員とが事務室前で交わす挨拶でケアハウス鶴が丘の一日が始まります。
 当施設は、平成8年4月に県内3番目のケアハウスとして城下町鶴岡に誕生しました。現在の入居者の平均年齢は、81.5歳で男性11人、女性39人の構成となっています。スタッフは、給食業務を委託しており、施設長以下5名です。
 鶴が丘の特徴は、土地区画整理事業で整備された住環境の優れた地区にあり、羽越線鶴岡駅から車で5分、中心市街地まで10分。近くにはホームセンターやスーパーが立ち並び、利便性に富んだ市街地の一角にあります。周辺には老人保健施設をはじめ、特別養護老人ホーム、痴呆性老人グループホーム、有料老人ホームがあり、高齢者福祉施設の整備が比較的進んでいるといわれる鶴岡市の中でも最大の福祉ゾーンを形成しています。
 居室はゆったりしたワンルームで、全室が南に面し、採光・日光に配慮した設計となっています。5階屋上からは、北に出羽富士・鳥海山、東に月山、南に金峰山、そして殻倉庄内平野を一望できます。その他、サンルームや談話室など、憩いや安らぎ、語らいのスペースを設けています。
 生活の利便性の面では、関係者の協力の下、銀行、食品、クリーニング、歯科診療などが週1〜2回、市の移動図書館が月1回の割で訪問してくれます。
 最大の特色は、ほとんどの入居者が高血圧や狭心症など、既往症をかかえていますので、通院や急病時の対応が施設の安心面での重要課題ですが、幸い、隣接する有床診療所とは渡り廊下で結ばれていますし、健康管理契約を締結していて、早朝・深夜でも迅速に対応していただいていることです。

利用者主体の運営

 鶴が丘の使命は、自立生活可能な人びとの入居施設であり、利用者がこれまでに培った豊富な経験や才能を存分に発揮し、当施設での生活を通して、更なる地域社会への貢献と自立に富んだ生きがいある日々を営むことができるサービスの提供です。
 具体的な取り組みとしては、第一に、利用者の多様な意見を反映した運営です。年2回の食事や行事など、施設生活全般についてのアンケートをはじめ、意見が発表しやすいように、全員を対象にするだけでなく、男女別、年代別、居住階(4階)別など、対象を変えての懇談会による意見・要望の掘り起こしを行っています。
 月1回のペースで行う行事・イベントは、1年を前・後期に分けて実行委員を委嘱し、企画・立案および実行にあたっていただいています。利用者が主役となる編集をめざした広報委員会や、食に対する嗜好や要望に配慮した献立作成のための給食委員会を設置するなど、豊かなの知識、技能や経験を可能な限り発揮できるようにしています。
 また、各階ごとに複数の防災協力員を委嘱しており、休日や夜間など、職員不在時の非常事態に備えるとともに利用者間の連帯意識の醸成にも努めています。
 身体機能の維持と低下防止をめざした取り組みとしては、医師や歯科医師、薬剤師による健康講話をはじめ、毎週定期的に輪投げや太極拳、リハビリ体操を実施しています。
 施設の社会化・地域化の面では、夏祭りを地元自治会や町内所在の施設と共催で実施したり、地域住民からは、施設の文化祭への作品の出品や毎月の想い出の映画を鑑賞するビデオ・喫茶など、各種のイベントやサークル活動に参加していただいています。
 一方、利用者は、老人クラブに加入して自治会の催しに参加するなど、地域住民との親睦・交流を深めています。

定員確保が健全経営の要諦

 経営面では、経営の基盤と言える利用者の確保が主要課題となっています。当法人では、昨年4月に二つ目の施設として定員50人の知的障害者更生施設を隣接する羽黒町に開設しましたが、ケアハウスは実質単独経営で、施設の収入は利用料金と事務費補助金に支えられており、定員一杯の利用者確保が健全経営のキーポイントといえます。
 オープン3月目に50人を満たして以来、常に定員を確保してきていますが、当市においても、ここ数年有料老人ホームの建設が相次ぎ、今後一層、民間企業の老人福祉産業への参入が活発化することが予想され、ケアハウスへの進出を視野に入れた対策が喫緊の課題となっています。

徹底した個別化サービスの提供

 鶴が丘の最大の弱点は、自立困難となった方々の新たな生活の場の確保です。これまでは、協力関係にある医療法人の老人保健施設や新設の介護付き有料老人ホームに優先的に受け入れていただいていましたが、老人保健施設は介護保険適用施設となり、有料老人ホームも満室の状態で、これまでのような受け入れを期待できないのが実情です。
 こうした事態を受け、この2年、特定施設入所者生活介護事業所としての指定も検討しましたが、ケアハウスの自立生活者の住まいという特性の維持が困難となり、やがて特養化することが避けられないことが容易に予測され、現利用者の理解を得ることと、指定のための人的・物的条件整備も困難なことから、断念せざるを得ませんでした。将来的には介護付き施設の建設も視野に入れた発展的経営をめざしながらも、当面は介護無しでも「鶴が丘」への希望者が絶えない魅力ある施設作りに努めることが生き残りの唯一の道ではと考えています。
 具体的には、今日の利用者は昨日と同じではないことを念頭に、日常の業務や居室訪問などを通して、利用者個々の身体的・精神的状態の的確な把握に努め、ひたすら個別化サービスの創出・提供に心がけている日々です。

(今野陽三/老−25期)